研修講師として独立開業・年収アップ

あなたの研修が「研修体系のどこに位置づけられるのか」がすべて

なぜ、研修体系がどの会社もだいたい同じようなカタチをしている理由については、別のコラムでご説明しました。

企業の人事担当者はこの研修体系を基準に、毎年どの研修にどのくらいの予算を配分するかを考え、どんな研修を採用すべきかを検討します。

この事実は研修講師ビジネスにとって重要です。なぜなら、あなたの研修は必ずこの研修体系に組み込まれることを前提として商品開発をする必要があるということだからです。研修体系のどこに位置づけられるかによって研修料金(講師料)もリピート率も影響を受けます。

そこで今回は研修体系の内容について説明します。

研修体系の主なカテゴリー

企業はタテとヨコのたくさんの役割分担から成り立っており、そのために社員に求める役割によって必要な研修テーマが異なります。それをわかりやすく一覧表にしたものが「研修体系」です。一覧表として作成しておくことで、いつ、誰に、どのような研修を実施するのかということについて体系的に整理でき、計画的・継続的に研修を実施することが可能になります。

研修体系の代表的なカテゴリーは下記のとおりです。

左から階層別研修、課題別研修、テーマ別研修、全社研修、そして部署別または職能別研修です。多くの会社は、階層別研修から全社研修までを人事部門が管轄し、部署別研修や職能別研修は部門長が管轄して予算をもっていることが多いと思います。

以下、研修体系をカテゴリーごとに説明します。

ほとんどの会社が行っている階層別研修

結論をいえば、あなたが研修講師として長期的にコンスタントに稼ぐためには「階層別研修」を提供できる講師になることがポイントです。

なぜならば、ほとんどの会社が階層別研修を行っているからです。HR総研の調査では83%の企業が階層別研修をしているという結果が出ています。私が検索した限りでは、95%の企業が階層別研修を行っていると書いてある研修会社のサイトもありました。

ご存じの方も多いと思いますが、階層別研修について簡単に確認しておきます。

階層別研修とは、職位や社内等級など「組織上の階層ごとに期待されている役割」を理解し、「その役割を遂行するために必要な能力を開発する」ために行われる研修です。実際に実施される場合は、新入社員研修、若手研修、3年目研修、中堅社員研修、リーダー研修、新任管理職研修、課長研修、上級管理職研修、部長研修などの名称で実施されています。

このように階層別研修は新入社員から部長までタテの階層に分けて行われます。それぞれの階層で受け持つ役割が違うからです。社内にはほかにも部署や職種などヨコの役割分担もありますが、最も行われている研修はタテの役割分担である階層別研修です。なぜなら、階層別研修には人事の中核制度である等級制度を機能させる役割があるからです。この点について詳しくはこちら

課題別研修は階層別研修に取り込まれつつある

「課題別研修」というのは、例えば、人事考課をうまくするための考課者研修や部下育成をうまくするための部下育成研修というように職場の課題解決に焦点をあてて実施される研修のことをいいます。

課題別研修と右隣カテゴリーの「テーマ別研修」は区別がわかりにくいですが、テーマ別研修は、職場の問題ではなく1つの知識やスキルに焦点を当てた研修のことをいい、ここにあるように、コーチング研修やロジカルシンキング研修などが代表的なものです。

注意してほしいのは、部下育成に焦点をあててその中の手段の1つとしてコーチングを学ぶときは課題別研修ですが、部下育成に限らず一般的なコーチングを学ぶ場合がテーマ別研修になります。

この課題別研修は階層別研修に取り込まれつつあります。どういうことかいうと、これには日本企業の経営環境の変化が大きく影響しています。

20世紀までの階層別研修というのは、階層(特に管理職)の役割や心構えをみんなで話しあったり、経営者や著名人から訓話を聴いたり、地獄の特訓のような内容も多く、ビジネスに関する知識やスキルを学ぶ研修ではありませんでした。ちなみに、20世紀に会社員だった私も地獄の特訓形式の管理職研修に参加したことがあります。

それが、経営環境の変化とともに新しい知識やスキルを学ぶことが必要となり、現在はそれぞれの役割を果たすために必要な知識やスキルを学び、それを活用して職場の問題の解決策を考える研修として変化してきました。

以前は階層別研修の内容は心構えやスタンスだけだったので、それとは別のカテゴリーとして考えられていた課題別研修が階層別研修のなかに取り込まれるようになっているということです。ここでのポイントは、課題別研修が階層別研修にとってかわったのではなく、階層別研修の中に課題別研修が取り込まれているという点です。

テーマ別研修・全社研修はeラーニングへ置き換わる傾向

先述したように「テーマ別研修」とは1つの知識やスキルに焦点を当てた研修のことをいい、コーチング研修やロジカルシンキング研修などが代表的なものです。

テーマ別研修は集合研修形式で実施されるのではなく、社員個々人が必要だと思う知識やスキルを学ぶための研修だと位置づけられることが多くなっています。そのため自己啓発制度として、受けたい人がいつでも受けられるeラーニングや通信講座などが導入される傾向があります。

次のカテゴリーである「全社研修」とは名称の通り、社員全員が学ぶべきテーマの研修です。ここに例で上げたように情報セキュリティやコンプライアンスなどがあげられます。

この全社研修は21世紀になってから企業のすべての社員に法律や社会的規範を守ることが強く求められるようになったことから始まった研修です。全社員を一斉に集めるのは大変ですので、この分野もeラーニングが活用されています。

テーマ別研修と全社研修は理由は違いますが、どちらもeラーニングに置き換わっている傾向にあります。もし、あなたの研修を人事担当者がこの2つのカテゴリーのどちらかに位置づけてしまったら、eラーニングとの価格競争から逃れられません。

最後に、カテゴリーの右端にある「部署別研修や職能別研修」は、部署における担当業務の実務的な課題解決のための研修です。代表的な例としては、営業研修、工場での品質改善研修や店舗での接遇研修などがあります。

部署別研修や職能別研修は、部署が抱える課題や対象人数によって、部署内の階層別に分けて行われる場合と階層に関わらず参加者が集められて行われる場合があります。

部署別研修や職能別研修は根強いニーズのある分野ですが、クライアント企業と同業種・同業界での実務経験や指導経験が研修講師には求められることが多いと思います。

階層別研修がなぜ重視されるのか?

研修体系の代表的なカテゴリーをご説明しましたが、ここに示した研修体系は従業員数が多い大企業のものです。従業員数が少なくなるとテーマ別研修や職能別研修などを行う企業は少なくなり、階層別研修だけ、その中でも新入社員研修と管理職研修だけを行うという企業が多くなります。

また不況になると会社は利益を出すために経費削減を行います。教育研修費は経費削減のターゲットになりやすいものですが、テーマ別研修や職能別研修は削減されても、よほどのことがない限り階層別研修は実施されます。階層別研修を止めてしまうと社内に教育格差が生まれ、組織力が発揮されにくい状況が生まれるからです。

経営者は経営環境の変化に適応して企業を存続させるために経営戦略を策定して組織を指揮しますが、戦略を現実的に実行していくのは組織です。組織力がないと戦略はうまく実行されません。

階層別研修の目的は「組織力の強化」です。これが階層別研修が重視される理由です。なぜ、課題別研修が階層別研修にとってかわらずに階層別研修の中に課題別研修が取り込まれているのかの理由もここにあります。この点について詳しくはこちら

まとめ|階層別研修に位置づけられる研修をつくろう

企業はおカネを使うことにシビアです。個人のように衝動買いをすることはありません。年度末までに次年度の経費予算枠が決められ、その中から研修費などの外注費が支払われます。予算外の経費を使いたい場合は大変な手間(稟議決裁手続き)がかかるので、よほどのことがない限り予算をとってもらえません。

つまり、あなたが研修講師ビジネスで安定的に稼ぎたいのなら、人事担当者が必ず予算枠として持っている「階層別研修」の中に「あなたの研修」を位置づけてもらわなければならないのです。研修会社に売り込んでもらうのなら「階層別研修ができる講師」として売り込んでもらわなければなりません。

あなたの研修講師としてのご活躍を心から応援しています。

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