研修講師の仕事・研修の作り方とコツ

なぜ研修体系はどこも同じカタチをしているのか?

研修講師としてコンスタントに年収1000万円を稼いでいる方は、スタンダードな階層別研修にしっかりと取り組んでいることを別のコラムでご紹介しました。

その中で以下のような話をしました。

- 研修体系というものはどこの会社も大変似たカタチをしています。この中で中核となるのが階層別研修です。(中略)階層別研修の内容は時代とともに少しずつ変化していますが、階層別研修という形態は今後もなくなることはありません。なぜ研修体系が同じカタチをしているのか、なぜ階層別研修がなくならないのかについては、話が長くなるので別のコラムでご説明しますが、人事が研修の年間予算を最も多く配分するのが階層別研修であり、毎年、地味に繰り返し行われるのが階層別研修です。-

この記事を受けて今回は、なぜ研修体系がどこの会社も似たカタチをしているのか?、なぜ階層別研修がなくならないと言えるのか? についてご説明します。

これを理解するためには「人事制度」の理解が欠かせない

個人は会社に採用されると必ずどこかの部署に配属になり、その後、部署を異動することもあります。昇格して給与があがり、役職者に任命され、さらに上の役職に昇進したり時には降職されることもあるでしょう。これらの処遇に伴って報酬額が決定されます。

採用されて退職するまでの間、社員個人の処遇・報酬額決定の基礎となっているのが、その人に対する人事評価です。そして、人事評価の基盤となっているのが社内格付制度と呼ばれているものです。

社内格付制度は、等級制度、役職制度、コース制度などでできています。社員はその企業の在職中は、この制度によって必ずどこかに格付けられています。

社内格付制度の中核である「等級制度」

人の集まりである組織が力を発揮して機能するためには役割分担が必要です。言い換えれば、組織というのは「分業と協業の仕組み」でまわっています。

企業という組織には、営業部、製造部、管理部というようにヨコの分業があります。また、部長、課長、リーダー、社員というようにタテの分業もあります。

いったん分業した役割を互いにうまくかみ合わせるために、役割分担を見直したりルールをつくったり、会議やミーティングで話し合って協力する、つまり協業することによって、毎日の仕事を計画通りに進め経営戦略を推進しているのが、企業という組織です。

企業のタテの分業が定義されているのが「等級制度」です。新入社員から部長クラスまでをタテに何段階かに分けて、各等級にどんな成果を期待しているか、どんな役割を果たしてもらいたいか、どんな能力を発揮してもらいたいかが規定されています。

ヨコの分業-どんな部門・部署をつくるのかは、業種業態や会社の戦略によって変わりますが、タテの分業である等級制度はどの組織もほとんど同じです。

社内格付制度、その中でも特に等級制度は経営戦略を推進するための組織の基本的な役割分担と指揮命令系統を示しており、人事の中核制度といわれます。組織を機能させるために最も基本的で、最も重要な仕組みが等級制度だということです。

等級制度は人事の3つの基準を示している

社内格付制度の中核である等級制度は、人事評価の評価基準であるとともに、社員の採用基準であり、育成基準であります。

例えば、組織を機能させるためにチームワークが重要な会社は、等級制度(特に一般職の該当部分)にチームワークを重視した定義が書かれているはずですし、社員ひとりひとりが自律的に働くことで組織を機能させたい会社は、自律性や主体性の発揮を重視した定義が書かれているはずです。

上司は等級制度の定義に基づいて、部下を評価します。人事担当者は等級制度の定義に書かれている役割や能力を入社後に発揮してくれそうな人を採用しようとします。

社員育成策の1つである研修も、等級制度に定義された役割を認識したり能力を開発するために実施されるのが大原則です。社員育成策は、等級制度以外にもその時々の経営戦略の進み具合や人事評価の結果、経営環境の変化などの影響を受けることもありますが、原則は等級制度が基準です。

社員がタテに役割分担された、それぞれの役割を果たすことで組織が機能して経営戦略が推進されることを期待して規定されるのが等級制度であり、それは評価・採用・育成の基準を示しています。同一の基準によって評価・採用・育成が繰り返し行われることで、その会社の経営戦略が推進されやすい機能する組織が出来上がっていきます。

これが人事の本質的な仕組みになります。

なぜ、研修体系はどこの会社も似ているのか?

研修体系はどこの会社も似たカタチをしています。なぜなら、等級制度がどの会社もほとんど同じカタチをしているからです。

そして、組織の役割分担システムの基本中の基本である「タテの分業と協業」をうまく機能させるために行われるのが階層別研修です。

階層別研修の「内容」は時代とともに少しずつ変化していますが、階層別研修という「形態」は今後もなくなることはありません。

なぜなら、階層別研修のベースにあるのが等級制度だからです。等級制度は組織の屋台骨ともいえるものなので、内容を見直すことはあっても制度そのものをなくしてしまうことは難しい制度です。組織から等級制度がなくならない限り、階層別研修もなくなることはないでしょう。

まとめ|等級制度を機能させるための階層別研修

なぜ、研修体系がどこの会社も似たカタチをしているのか?、なぜ階層別研修がなくならないと言えるのか? その理由はご理解いただけたでしょうか。

人の集まりである組織が力を発揮して機能するためには役割分担がうまくいくことが必要です。そのために、企業は等級制度を取り入れています。

しかし、制度を導入すればそれだけでうまくいくというものではありません。

等級制度のタテの分業と協業の仕組みをうまく機能させるために足りないものを補う、うまく機能していない部分を改修する、さらにうまくいくように改善策を見出す、それらの役割を期待されているのが階層別研修だといえるでしょう。

それがわかれば、なぜ階層別研修が毎年繰り返し行われるのか、なぜ人事担当者は階層別研修に予算を最も多く配分するのかという理由も納得できるのではないかと思います。

あなたの研修講師としてのご活躍を心から応援しています。

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