研修講師として独立開業・年収アップ

研修講師ビジネスのほんとうのメリット・デメリット

ネットのまとめ記事で時々目にする「研修講師業のメリットとデメリット」。

『何が書いてあるのかな~』と興味本位でのぞいてみるのですが、正直なところ、実際に研修講師として働いたことがない方が書いたのではないかな…と感じることがあります。

そこで、この業界キャリア30年の私が感じているメリットとデメリットを整理してみました。

研修講師ビジネスのメリット(長所)

企業研修講師という仕事のいいところとして、1つめに挙げられるのが、時間のコントロールが効きやすい点があります。

一般的にはどんな仕事であっても独立起業すると会社員より自由な時間が増えますが、企業研修講師は特に時間のコントロールが効きやすい仕事です。企業研修の場合は、その会社の行事や業務の繁忙期、参加する社員の都合など調整することが多く、講師の都合や希望も考慮して、はやめの日程調整が行われます。だいたい半年から1年前くらいに日程調整がなされます。

2つめは、一般的な会社の勤務日・勤務時間帯で働けることです。

研修は業務時間内に実施されるのが原則ですから、多くの場合、月曜から金曜の9時から18時の間で設定されます。同じ講師ビジネスでも個人対象のセミナーの場合は、どうしても土日や夜間が多くなると思いますが、企業研修はそれはありません。子育て中の方など、ご家族との時間を大切にしたい方にとってはこの点はよいのではないかと思います。

3つめは資金やリスクに関する点です。

研修ビジネスは先行投資や設備投資が要りませんので資金準備が必要なく、開業後も特に必要な仕入れや経費が大きくかかるものがないのが、研修ビジネスです。名刺さえ作ればだれにもできる仕事だと揶揄されることもありますが、確かに、独立開業のハードルは低いと思います。

4つめは、営業や集客を自分でしなくてもよいということです。

この業界には研修会社という営業に特化したビッグプレーヤーがいますので、研修講師は全く営業しなくても仕事をすることが可能であり、講師の仕事に専念することができます。

5つめは、会社員経験が活かせることです。

会社員経験といっても、社内でトップ営業だったとか社長賞を受賞したとか、そういう経験は必要ありません。そういう経験があれば、それはそれで大きなウリになりますが、普通の会社員として勤務した経験が役に立つのが研修講師業です。なぜなら、研修参加者の悩みに共感できたり組織の問題を共有できたりしやすいからです。

会社員から未経験の業種で独立開業、例えば飲食業とか農業を始めたいと思ったら本格的な下積みが必要ですが、それに比べるとそういう意味での下積みがなくてもできるのが、研修講師ビジネスだと思います。

このビジネスの一番のメリットは?

企業研修講師ビジネスのメリットの6つめとして、顧客ニーズが分かりやすく、講師料を高くする商品やリピートされやすい商品が分かりやすいという点が挙げられます。私自身は、これがこのビジネスの最大の長所だと考えています。

私は以前、個人を対象としたスクールの経営をしていましたが、その時は商品開発や価格設定に本当に苦労しました。個人の方はスクールに通われる動機もスクールに求めることもほんとうにさまざまですし、お金の価値観や経済状況もさまざまです。

企業研修はそれに比べたら、顧客ニーズもわかりやすいし、価格も「この研修だったらこのくらいの価格」と暗黙に共有されている業界価格が存在します。

最近、人事顧問をしているクライアント企業が年間研修のコンペをした時の話ですが、コンペに参加した全ての研修会社の見積もり額がほとんど同じといってよい価格帯でした。経営者も人事担当者も「まあこれくらいですよね」と想定の範囲内でした。

企業研修業界は歴史の長い、ややオーソドックスな業界なので、その点を押さえるとビジネスがやりやすいという長所があります。

研修講師ビジネスのデメリット(短所)

次に、企業研修講師という仕事の短所、よくないところを挙げてみましょう。

1つめは、属人的ビジネスなので自分の代わりがいないことです。

企業研修は多くの人の日程調整が必要なので、日程を決めるまでは講師の都合を聞いてもらいやすいのですが、いったん日程が決まると、簡単に変更をすることができません。自己管理がとても重要になります。

2つめは、利害関係者が多いので配慮することが多いところです。

個人対象のセミナーの場合は講師と受講者の2者でビジネスが成立しますが、企業研修の場合はビジネスの取引先は企業であり、研修参加者は企業の社員で業務指示のよって研修に参加しています。ひとくちに企業といっても、窓口となる人事担当者、その上司や経営者、時には研修参加者の上司などの意見も研修に影響する場合があります。

また、研修会社のパートナー講師として活動する場合は、研修会社がクライアント企業と講師の間に入ります。

このように、企業研修ビジネスは教育ビジネスのなかでも利害関係者が多いという特徴があります。ビジネスをうまく運ぶためには、それぞれの利害関係者のことをよく知って配慮することが必要となります。

3つめは、会社員経験や企業研修の参加経験が全くない場合、企業研修講師の仕事がイメージできないことが挙げられます。

以前、企業研修の参加経験が全くない方から、カウンセラーの資格を活かして研修講師で独立したいという相談を受けたことがあります。研修講師の仕事について詳しく説明した結果、その方は一般企業に転職する道を選ばれました。

「カウンセリングスクールの講師と同じことをすれば企業研修ができると思っていたけど、まったく違うんですね」と何度も言われた記憶があります。

あまり知られていないデメリットは?

研修講師になると「同業者お断り」の壁が現れます。

どういうことかというと、公開講座やセミナーを受けようとすると「研修講師をしている方の受講はお断りします」と言われる(書かれている)ことがとても多いのです。私自身は学習の場が少ないことに悩んで大学院に通いましたが、大学院では専門的なことは学べますが、ビジネスの相談や日常的な情報交換ができるわけではありません。

また、ひとりで仕事をしている方が多く同業者と知り合う機会も多くはありません。うまく仕事が運んで忙しい時はいいけれど、悩んだり落ち込んだりしたときは孤独が身に染みる仕事だと思います。以前は講師の勉強会や懇親会を催している研修会社がけっこうあったのですが、コロナ禍もあって最近は少なくなりました。

そんな事情もあって、研修講師という仕事は学習の場や相談相手が見つけにくく、キャリアの壁にぶつかりやすいという点が大きな短所だと思います。

まとめ|実際にやってみないとわからないメリットとデメリット

以上、私の30年間の業界経験をもとにメリットとデメリットをご説明しました。

研修講師ビジネスはメリット3番目の「参入障壁の低さ」が強調されやすく、ネットなどでもそのような情報が目につきますが、一方で、この業界は参入しやすいけれど長く続けている人が少ない業界だとも思います。転業廃業される人もけっこういらっしゃいます。キャリアの壁にぶつかりやすいのです。

もし、あなたに研修会社の営業担当者とか講師仲間、特に先輩講師の方で相談や情報交換できる方が見つかったら、ぜひその方とのおつきあいを大切にしてください。

あなたの研修講師としてのご活躍を心から応援しています。

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